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うつす
うつす
中井 正一
「光画」1932(昭和7)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,121 字 · 7 页
そして、それはついに賛歎となってすべての人々をも囚えた。王もまた三嘆之を久しうして去ったという。すなわち、鏡のごとく磨かれたる壁にはあい面して描かれたる寂光の土がうつしだされて、あまつさえそこに往来する王様の姿もが共にあい漾映して真の動ける十万億仏土を顕現したるがさまであったという。
画家の機知もさることながら、このミトスの中にはかなり深い意味で、芸術現象の本質的なる構造をあらわにしていると思う。
そこには描くことと映すことの内面にある芸術性への指示が潜んでいる。映すことの構造はうつすが示すように移す、映す、覆すなどの等値的射影を意味している。場所的に一方より一方に移動せしめ、しかも関連的等値性をそれが帯びている場合、それをうつすと人々はよぶのである。
高山に登った人々の経験することであるが、山の頂きにたどりついて、脈々と連なる尾根を見晴らす時、何か叫びだしたくなる。そしてヨーホロロ…………ォと山に特有の調子でどこへともなく喚びかける。否、全山の清澄な空気と無限の寂けさへ向って喚びかける。そしてしばらく耳をすます時、山々の嶺より帰りきたるみずからの声がいろいろの変形を受けながらひろびろとひろがって、かぎりない空間に消えていく、ある時は見えない谷間から人の声をもって、ヨーホロロ…………ォと喚びかえさるること