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おおかみとひと

おおかみと人

小川 未明

「こども雑誌」1920(大正9)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,224 字 · 9 页

青空文庫

彼はあまりいい気持ちはしませんせした。

「やはり畜生などというものは知恵のないものだ。とうてい、知恵のある人間には勝てるものでない。」といいました。彼は、明くる日昨日あった事柄を村の人々に語って、自分がうまくおおかみをだましてやったと誇りました。

「人間の命を取ろうなんていうのが、ふらちなんだから、おおかみの約束を破ったってさしつかえない。」と、与助はいっていました。

「どんなおおかみだったえ。」と、村の人々は聞きました。

「灰色の大きいおおかみだった。見たところでは年をとっているおおかみだった。」と、彼は答えました。

「おともをしてきたのだから、なにかやればよかったのだ。」と、中にはいったものもありました。

けれど、知恵自慢の与助は、得意そうに笑って、

「あのとき、鉄砲でズドンと一発打てば、それまでだったのだ。せめても、こっちが命を助けてやったのをありがたく思ったがいいのだ。」といいました。

この話を聞いて猟人のおじいさんは、頭をかしげて、

「そんなうそをいうもんじゃない。おおかみがあだを返さなければいいが。」といいました。

これを聞いた与助は、おおかみの出るのをおそれて、その後町へいくにも帰るにも、みんなといっしょでなければ歩けなかったのであります。