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おけらになったはなし

おけらになった話

小川 未明

「赤い鳥」1926(大正15)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,798 字 · 8 页

青空文庫

牢屋の番人は、たまげてしまいました。まったく影のごとくに消えてしまったこの男を、普通のものとは思われなかったのです。

男を知っているものは、そんなうわさをしているやさきに、男が、目の前へ姿をあらわしたものですから、びっくりして、

「はや、おまえは、牢から出たのか?」と、いうものもあれば、

「いつ、そんなからだになったのか……。」と聞いて、あまり、その許されようの早いのにあきれたものもありました。

男は、ずるそうな目つきをして、みんなの顔を見まわしながら、にやにやと笑って、

「なんで、こんなに早く許されるものかな、おれは、逃げてきたのさ。しかし、おれを捕らえておくなどということは、無理だよ。おれは魔法使いだからな。」と答えました。

みんなは、腹の中で、ほんとうに、この男は、魔法を使うのだろうか? なんにしても、また困ったことができたものだと思ったのであります。

男は、さかんに悪いことをしました。しかし、世間は、それを許すものではありませんから、じきにまた捕らえられてしまいました。こんどは、手きびしくされて、ふたたび逃げられないように、牢屋の中へいれられてしまいました。