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おけらになったはなし

おけらになった話

小川 未明

「赤い鳥」1926(大正15)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,798 字 · 8 页

青空文庫

「神さま、私は、人間に生まれてきたばかりに、つい、みんなよりも楽をし、またおもしろいめをしようとする気になりました。それで、うそをついたり、他人のものを盗んだりしたのです。私は人間になりたいとは思いません。ほんとうに一ぴきの虫でもいいから、この強欲な心と不正の考えを、私からうばってください。そして、私を虫にしてください。私は、虫となって、神さまのおぼしめしに従って、自由に生活をしたいと思います。神さま、どうぞ、私を虫にしてください!」と、いっしんに、牢の中で祈ったのであります。

ある朝のこと、男は、そこに見えませんでした。番人は、夢かとばかりにびっくりしました。

「あの男は、どこへいったろう? ねずみでさえこの金網の目はくぐれないはずだ。ふしぎなこともあればあるものだ。」といって、さわぎたてました。

役人たちは、集まってまいりました。そして、みんなは、頸をかしげました。

「この世の中に、魔法を使うというようなことが、はたしてあるものだろうか?」

錠のかかっているのを役人たちははずして、狭い牢の扉を開いて中へはいり、くまなく、あたりを調べてみました。

このとき、一ぴきのおけらが、入り口から出て、だれも、それに気のつかなかったまに、町の方を指して、大地をはっていったのであります。