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おさくのはなし

おさくの話

小川 未明

「教育研究」1929(昭和4)年10月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 4,508 字 · 9 页

青空文庫

おさくは、貧しい家に生まれましたから、小学校を卒業すると、すぐに、奉公に出なければなりませんでした。

「なに、私が、いいところへ世話をしてやる。」と、植木屋のおじいさんはいいました。

彼女の父親は、とうに死んでしまって、あわれな母親と暮らしてきました。おじいさんは、しんせつな人であって、なにかに、二人を気にかけてくれたのであります。

「工場へゆくよりか、夜は、勉強でもさしてくださる、どこかしんせつのお家がいいと、おじいさんは心配していてくださるのだから、見つかって、そのお家へいったら、よくいいつけを守って、働かなけりゃならないよ。」と、お母さんは、いいました。

「お母さん、きっと、よく働きます。どうか、心配なさらんでください。」と、おさくは、目に、いっぱい涙をためて答えました。

「ああ、おまえが、その決心なら、お母さんは心配しません。」

こう、母親は、いったものの、これまで長い間、二人は、むつまじく、朝晩、顔を見合って、暮らしてきたのに、この後は、べつべつに生活しなければならぬと知ると、なんとなくさびしくなりました。しかし、どうせ、娘は、一度は世の中に出なければならない運命であると考えると、こんなに気を弱くしてはしかたがないと、強いて、元気をつくっていました。