轻松读懂日语经典作品
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おさん
おさん
山本 周五郎
「オール読物」文藝春秋新社、1961(昭和36)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,128 字 · 66 页
「おじちゃんが訊いてるのを聞いちゃったんだ、これからまた大鋸町へ戻るのかい」
「きみの悪いやつだな、大鋸町のときから跟けていたのか」
「ずっとだよ、沼津からずっとさ、おじちゃん気がつかなかったのかい」
参太は子供の顔をみつめた、「大磯でも、藤沢でもか」
「神奈川じゃ柏屋で泊ったね」
「おどろいたな、どうして声をかけなかったんだ」
女の人がいたもの。女は嫌いか、と参太が訊いた。嫌いさ、女はみんながみがみ小言ばかり云うし、ひとを子供扱いにしやがる、女には近よらねえことにしているんだ、と子供は云った。
作次は長屋をひきはらった。今年の三月だという、おさんに男ができて、作次は酒びたりになり、おさんがいなくなった。作次は狂ったようにおさんを捜しまわったが、みつけだしたのかどうか、彼もまた長屋をとびだしてしまった。日本橋の魚河岸で軽子でもしているらしい、そのあたりで酔いつぶれているのをよく見かける。長屋の者はそう云っていた。――初めに大鋸町を訪ねたが、作次の女房はなにも云わなかった。そこも一と間きりの長屋で、これという家財道具はなく、がらんとした薄暗い部屋の中で、作次の女房は鼻緒作りをしていた。