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おじさんのはなし
おじさんの話
小山 清
「新潮 第五十巻七号」新潮社、1953(昭和28)年7月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,232 字 · 42 页
若しもそれが本当だとすれば、それこそ降って湧いたような話だ。それにしても、興信所の調査員がやって来たことだけは事実である。おじさんはまじめくさった顔をして私を見て、
「おれはこう考えるんだがね。きみがもと配達していた区域に娘はいないか?」
「娘なんか幾人もいるさ。」
「いや、一人あればいいんだよ。その娘がきみのことを見染めたんだ。」
おじさんの話によれば、こうであった。――私がもと配達していた区域のある家庭で、そこのひとり娘がいつからともなく気が欝いで、食事もすすまず、夜もろくろく眠らない。日ましに体は細る一方。両親は心配して医者に見せたが、どこも悪いところはない、これは私の専門外だと云う。そこで母親がこっそり娘を問い糺したところ、娘の云うことには、実は私はとうからあの配達さんのことを……。私は噴き出してしまった。まるで落語に出てくる横町の隠居が与太郎をからかうような話だ。
「冗談を云っちゃいけねえ。おじさんも人が悪いな。」
「冗談なもんか。ほかに考えようがないじゃないか。娘が病人になっては両親としても抛っておけないから、そこで興信所に頼んできみの身許しらべということになったんだ。