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おせん

おせん

邦枝 完二

在线阅读邦枝 完二《おせん》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,074 字 · 148 页

青空文庫

――相手が橘屋の若旦那だったてえな、ほんまかい」

「おめえさん、それを聞いてどうしようッてんだ」

顔をしかめて、春重を見守ったのは、金蔵に兄イと呼ばれた左官の長吉であった。

「どうもしやァしねえがの。そいつがほんまなら、おいらもちっとばかり、若旦那に借りてえと思ってよ」

「若旦那に借りるッて」

「まずのう。だが安心しなよ。おいらの借りようッてな、二十五両の三十両のという、大それた訳のもんじゃねえ。ほんの二分か一両が関の山だ。それも種や仕かけで取るようなけちなこたァしやァしねえ。真証間違いなしの、立派な品物を持ってって、若旦那の喜ぶ顔を見ながら、拝借に及ぼうッてんだ」

「そいつァ駄目だ」

「なんだって」

「駄目ッてことよ。橘屋の若旦那は、たとえお大名から拝領の鎧兜を持ってッたって、金ァ貸しちゃァくれめえよ。――あの人の欲しい物ァ、日本中にたったひとつ、笠森おせんの情より外にゃ、ありゃァしねッてこった」

「だから、そのおせんの、身から分けた物を、おいらァ買ってもらいに行こうッてえのよ」

「身から分けた物。――」

「そうだ。他の者が望んだら、百両でも譲れる品じゃねえんだが、相手がおせんに首ッたけの若旦那だから、まず一両がとこで辛抱してやろうと思ってるんだ」