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おもしろいはなし

おもしろい話

畔柳 二美

「言語生活 四十六号」筑摩書房、1955(昭和30)年7月1日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,763 字 · 6 页

青空文庫

私は、北海道で生れて、北海道で育ち、二十才をすぎてから上京して、三十代を関西で送った。私の父は東北出身だったので、東北のズーズー弁と、北海道生れの、やや標準語に近い母の言葉を手本に私は成長した。私の父は、たいていの品物の下に「こ」をつけて話した。

例えば、「あそこの娘っこは、いい娘っこだが、まだ、こつこの犬っこをいじめているようでは、本当のいい娘っことは、いえないな」

たいへん機嫌のいい時など、父は、こんなふうに云った。北海道では、父と同じように「こっこ」という言葉はあるが、つづけて、「娘っこ、こつこ」とは云わないので、私たちは、そんなときには腹をかかえて笑った。父はそのほかにも、「茶碗っこ、酒っこ、鍋っこ」などとも云った。

あるとき、私は、大いに意気ごんで父に忠告をしたことがあった。

「父さん、あのね、あんまり『こ』をつけないほうがいいよ。何となく下品にきこえるもの」

「自分では気がつかないが、父さんは、そんなに「こ」をつけるかな」

「つけるねえ。これからは、ぜったい言葉の終りに『こ』をつけないほうがいいと思う」

父は、私をみおろして、にっと笑った。