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おくみさんとそのしゅうい

お久美さんと其の周囲

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第一巻」河出書房、1951(昭和26)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,369 字 · 149 页

青空文庫

去年来ました時には前の川で魚を取る事許りに根をつくして居ましたっけが、此頃は一角大人なみに用を足してもくれましてね。

けれども朝から晩まで机の前に座ったっ切りで居られるのは何より心配ですよ。

第一躰のためによくありませんのさ。

昔の労症労症って云ったのは皆座って居る者に限って掛ったものですからね。

と真面目らしく云うのを聞いて居た者は、皆笑って仕舞った。

お久美さんは体を前後に振って永い間たまって居た心からの笑いが今あらいざらい飛び出しでも仕た様に涙をためて笑いこけた。

静かに微笑みながらお久美さんを見守って居た※(「くさかんむり/惠」、第3水準1-91-24)子は、鮮やかな赤い唇が開く毎びに堅そうに細かい歯ならびがはっきりと現われる単純で居て魅力のある運動に半ば心を奪われて居て、今自分が何を笑って居るのかと云う事さえもたしかではない様であった。

一しきり笑いがしずまるとお関は又元の頑なな顔の表情に立ち返って、

「それにしてもまあ女の子の育つのを見て居る位不思議なものはありませんですよ、

まるで何て云って好いか丁度日あたりの好い所に生えた芽生えの様なもんですね。