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おくみさんとそのしゅうい
お久美さんと其の周囲
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第一巻」河出書房、1951(昭和26)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,369 字 · 149 页
何だか「恭、恭」と呼び捨てにして此那仕事をさせて置いて好いのか知らんと云う気にさえなって、出来る丈の好意を以てあつかった。
出来る丈給金も出し家の者同様にして居るお関は、恭吉が自分に対して下らない悪口を云っても只其れを気の利いた悪戯口と外聞かなかったし、一寸した意見を吐いても只「恭吉は横文字が読める」と云う事ばかりにでも或る尊敬を感じて居るお関には如何にも意味のある立派な心の所有者の様に感じられた。
山田の主人も恭を今までの雇人とは異って持り扱って気持のよい身のこなしや小器用な仕事の仕振りを見ると、
「家もそろそろ養子の工面でもせんきゃあならんなあ。
等と云い出したりし、お関も亦重三の事がしきりに思われて、どんな立派な男に育って居るだろう、ぜひ一度は会いもしたし、出来る事なら家へ入れたいと云う願望がはげしく起って、長い間親知らずで放って置いた大切な息子へ気の毒であったり済まなかったりする気持が一方恭への態度をより丁寧に思いやり深くさせた。
まだ二十三で何処かしら未熟の若い節々がお関に自分の子に対する様な気持を持たせるに充分であった。
暑い日には町への使に出したくない、出来る事なら何にもさせずに楽をさせて置きたいと云う彼女等の階級の頭には先ず第一に起る姑息の愛情に全然支配されて、恭の口軽なのについ釣られて、