轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

かげろうのにっき

かげろうの日記

堀 辰雄

「改造」1937(昭和12)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,890 字 · 60 页

青空文庫

その女の事を憎い憎いと思いつめていた時分に「いつまでも死なせずに置いて私の苦しみをそっくりそのまま味わせてやりたいものだ」と思っていた通りに、すべての事がなって往きそうだった上、その生れたばかりの子供までが突然死んだと聞いた時には、「まあ何んていい気味だろう。急にそんなになってしまわれて、どんな心もちがしているかしら。私の苦しみよりかいま少し余計に苦しんでいる事だろう」などと考えて、本当に私は胸のうちがすっぱりとした位だった。――こんな人らしくもない心の中まで此処に書きつけるのは、ちょっとためらわれもしたけれど、こう云うところに反って生き生きとした人の心の姿が現われているかとも思えるので、この私と云うものをすっかり分って貰うためには、やはりそう云うものまで何もかも私はこの日記につけて置きたいのである。

さて、そんな事のうちに数年と云うものは空しく過ぎ去ってしまったが、そう、何でも五月の二つあった或年の事である。その閏五月には雨が殆ど絶え間もなしに降り続いていた。そうしてその月末から、どうしたのか、私は何処と云うこともなしに苦しくって溜まらなかった。