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かたいおおきなて

かたい大きな手

小川 未明

「銀河」1948(昭和23)年7月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 3,886 字 · 8 页

青空文庫

早く帰らなければ。」

こうおじいさんは、ひとりごとをしてから、話は、またお金のことにもどりました。

「わしが、はじめて、東京へきたとき、夜おそく電車に乗ったことがある。雨の降る暗い晩で、その車には、あまり人が乗っていなかった。そのうち、車掌が、切符を切りにきて、一人の男の前で、なにかあらあらしくいっていたが、その男を、途中からおろしてしまった。みすぼらしいふうをして、かさも持っていなかったが、聞いてみると、一銭不足のためというのだった。もっとも、あのころだけれど。」

ふけると、さすがに冷えて、おじいさんが、くしゃみをなさったので話を打ち切って、みんなも、寝ることにしました。いつになく、おそくまで、起きていた、勇吉が、

「おじいさんは、やっぱり、いなかのほうが、いいんでしょう。」というと、

「勇ぼうは、いなかへきて、おじいさんの家の子にならんか。」と、しわのよった、かたい、大きな手で、頭をなでられました。

勇吉は、かつて、知らなかった、あたたかな、強い力を感じました。それがいつまでも、頭に残ったのでした。