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からすのうたうたい
からすの唄うたい
小川 未明
「時事新報」1925(大正14)年5月7日~19日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,709 字 · 12 页
おじいさんは、びっくりしました。だれが俺のまねをするのだろう? あたりを見まわしたけれど、だれも、そこにはいませんでした。おじいさんは、不思議に思って、また、チャルメラをあちらに向いて鳴らしました。
すると、また、いつもおじいさんが歌うような節で唄をうたったものがあります。おじいさんは、人のまねをするやつは、なにものだろうと、こんどは、本気になって、あたりを見まわしました。
枯れた木の枝に、一羽のからすが止まって、頭をかしげていました。おじいさんは、いま、唄をうたったのはこのからすだなと思いました。
「からすは、人まねをするというが、こいつにちがいない。」と、おじいさんは、しばらく、からすをにらんでいました。
からすは、今日はじめて、ここにいたのではなかったのです。もう、長いこと、この野原の中にすんでいました。からすは、毎日、平和な日を送っていましたが、あまり平和と無事なのに飽きてしまいました。ちょうど、そこへ町の方から、おじいさんがきたのであります。
からすは、おじいさんが、チャルメラを吹き、唄をうたうのを、あちらの木に止まって、毎日のように聞いていました。