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くろがねてんぐ
くろがね天狗
海野 十三
「逓信協会雑誌」1936(昭和11)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,616 字 · 18 页
もし、半之丞さま、どうなすったのでござりまするか」
虎松は思いがけない半之丞に巡りあって、殺人鬼と権四郎の果し合いなど問題ではなくなった。半之丞は一向手応えがない、黙として、風のように抜けてゆく。と、それと同じように、黒装束の殺人鬼もヒラリヒラリと大通を向うへ走りゆく。
「権四郎、覚悟しろ!」
と、軒下なる半之丞と思われる人物は始めて口を開いて、呪わしい言葉を街上の勇士に抛げつけた。その途端に黒装束の怪人の大刀が電光のようにピカリと一閃して、――。
「うわーッ。うーむ――」
と、魂切る悲鳴が起った。声の主は権四郎だった。白刃をポロリと地上に墜すと体を絞り手拭のようにねじって、両手を代り代りに伸ばしては虚空をつかむと見えたが、やがて、ズドーンと地上に転落した。
「思い知ったか、権四郎!」
と軒端の半之丞は、遠くから呪いの言葉を吐いた。虎松はこの場の不可解な情景に立ち竦んだまま。
「大願成就だ。――ここらで引揚げよう」
と云った半之丞が、何気なく背後をふりかえって、そこで虎松とバッタリ顔を合わせて、ギョッとした。
「おお、虎松。――お前に教えとくが、この後こんな場に必ず出てはならぬぞ。