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けしのはたけ

けしの圃

小川 未明

「赤い鳥」1920(大正9)年7月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,337 字 · 11 页

青空文庫

そのうちに、長い馬の列はいってしまいました。けれど、まだ父親の出てくるようすが見えませんでした。小太郎は、父親はどうしたのだろうと思って、酒屋の入り口に立って、うす暗い内をのぞきました。しかしそこには、父親のいるけはいもなければ、また人の話し声もしませんでした。

「お父さん、お父さん。」と、小太郎は、急に心細くなって泣き声を出して、父を呼びました。けれど、なんの返答もありません。その内に番頭が顔を出して、

「だれも、家にはきていない。」といいました。小太郎は、父は、もう先にいってしまったのかと思って、後を追うために駆け出しました。

いくら駆けても、父の姿を見いだすことはできませんでした。小太郎は、父が、たしかに、あの町の角で待っていれといったことを思いうかべて、自分を独り置き残して、どこかへいってしまうはずがないと考えました。そして、いまごろは、父があの町の角で、自分を捜していはしまいかと思うと、また酒屋の前までもどってきました。けれど、そこにも、ついに父の姿を見いだすことはできませんでした。

「これは、きっと自分を置いて、お父さんはどこか遠いところへいってしまったのだ。