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ことのしんじつ

ことの真実

宮本 百合子

「婦人公論」1951(昭和26)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,470 字 · 15 页

青空文庫

一九四九年の春ごろから、ジャーナリズムの上に秘史、実録、実記と銘をうたれた記録ものが登場しはじめた。

氾濫した猥雑な雑誌とその内容はあきられて記録文学、ルポルタージュの特集が新しい流行となった。

記録文学、ノン・フィクションの作品が生れはじめ、またうけ入れられたのには、理由があった。戦争の永い年月、わたしたちの全生活がそのために支配され、欺瞞され、遂に破壊へつきおとされながら、直接の犠牲者である人民は、戦争の現実について、また社会の事実についてほとんど一つも知る自由をもっていなかった。降伏につづく激動の時期がすぎて、人々の心には、一体ことの真実はどういうものだったのだろうか、とあらためて知ろうとする意志がめざめた。戦争によって人生を変えられてしまった多くの女性の眠られない夜々には、せめて本当のことでもわかったら、と愛するものを死なせた南の海、北の山へ馳せる思いがある。

戦争にかりだされ、日本の帝国主義による戦争の実体に疑問を抱きながら、よぎなく侵略国の兵として他民族のけちらかされた生活のあいだにおかれてきた人々。戦争、軍隊生活そのものの野蛮さ、空虚さ、偽善に人間としての憤りを深くめざまされながら、それについては手紙に書くことも日記にかくことも許されなかった人々。