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ことのしんじつ
ことの真実
宮本 百合子
「婦人公論」1951(昭和26)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,470 字 · 15 页
著者がその惨苦に耐えた火のような生きる意欲そのもののはげしさ、生存のためにむきだしにたたかった、それなりの率直さで、現象から現象へ、エピソードからエピソードへと押しきる流れで語られている。
読者は次々と展開する插話にひきいれられて、口をはさむひまなく読むのであるが、さて、読み終って、わたしたちの心に、落付かない感じがのこされるのはどうしてだろう。
筆者は率直である。偽善的でない。荒々しい条件におかれた自身の荒々しい所行(「三百円儲けた話」)の物語といっしょに、恐怖をもって臆測されている北鮮の治安が実際にはよくて、保安隊の若もの、土地の人々の親切、ソ同盟の兵士の素朴な人間ぽさなども、それがそうであったように語られている。北鮮の新幕から三十八度線をこえて開城につくまでの徒歩行進の辛苦の描写は強烈で、一篇のクライマックスとなっているのであるが、著者は、新京から引揚げの開始された八月九日の夜から一ヵ年の苦しい月日のうちに起ったできごとを、その身でぶつかり、たたかい、つきぬけ、かきのけてきたことがらとしての範囲に集注して、あとはきりすてている。宜川の集団の住居の雪の夜、延吉という西北方の町から、半死半生でたどりついた三人の良人たちについても、そのおそろしい憔悴のさまは描かれているが、延吉というソ同盟軍の町につれられ