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さかずきのりんね
さかずきの輪廻
小川 未明
「婦人公論 9巻1号」1924(大正13)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,603 字 · 21 页
田舎は、変化が乏しいうちに月日はたちました。冬の寒い朝、仏壇に、燈火がついているときに、外の方では、子供らが、雪の上で凧を揚げている、籐のうなり声がきこえてくることがありました。雪が凍って、子供らは、自由に、あちらこちら飛んで歩きました。
それと、仏壇の燈火とは、なんの縁がないようなものの、やはり燈火はかすかな輝きを放って、その輝きの一筋に、凧のうなっている、青い大空の果てと、相通ずるところがあることを思わせたのです。夜は、暗い外に、木枯らしがすさまじく叫んでいました。そんなとき、たたく仏壇の磬の音は、この家からはなれて、いつまでも頼りなく、荒野の中をさまよっていました。
いつしか、孫の時代となりました。
彼は、古びた、朱塗りの仏壇の前に立っても、なんのことも感じなくなりました。
ある日、仏壇のひきだしを開けてみますと、小さな箱の中に利助のさかずきがはいっていました。彼は、これを取り出してみましたけれど、それがいいさかずきであるか、そうでないかということは、彼にはわかりませんでした。
けれど、孫は、先祖から大事にしていたさかずきであるということだけは知っていましたので、これをだれかに、鑑定してもらいたいと思いました。