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さかずきのりんね
さかずきの輪廻
小川 未明
「婦人公論 9巻1号」1924(大正13)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,603 字 · 21 页
近所に、一人のおじいさんがありました。この人は、なんでも、いまどきのものより、昔のものがいいときめていました。書物に書いてあることも、昔のほうのが、義が固くていいといっていました。暦も、新暦よりは、旧暦のほうが季節の移り変わりによく合っているといっていました。それで、時計すら、数字の刻んであるものよりは、日時計のほうが、正確だといって、船の形をした、日時計を日当たりに出して、帆柱のような、まっすぐな棒から落ちる黒い影によって時刻をはかるのでした。
孫は、そのおじいさんのところへ、さかずきを持ってまいりました。
「おじいさん。どうか、このさかずきを見てくださいまし。」と、彼は頼みました。
きれい好きな、おとこやもめのおじいさんは、家の内をちりひとつないように清めていました。おじいさんは、なにをたずねられても、知らぬといったことはありません。で、村での物知りでありました。さっそく、大きな眼鏡をかけて、
「どれ、そのさかずきかい。」といって、手に取って子細にながめました。
「たぬきかな? いや、ねずみかな、そうだ、ねずみらしい。絵は、あまりうまくないな。けれどこの藍の色がなかなかいい。