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さかずきのりんね
さかずきの輪廻
小川 未明
「婦人公論 9巻1号」1924(大正13)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,603 字 · 21 页
彼は、東京へ出てから、なにかたしになるであろうと、思ったのでした。
彼は、東京へきてから、ある素人家の二階に間借りをしました。そして、昼間は役所へつとめて、夜は、夜学に通ったのであります。あるとき、彼は、書物を買うのに、すこし余分の金が入用でありました。そのとき、ふと、国を出る時分に、荷物の中へ入れて持ってきた金銀の細工物とさかずきのまだ、売らずにあったことを思いつきました。
「どうせ、あのたばこ入れの飾りや、帯止めの銀の金具は、たいした値にもならないだろうが、もしあのさかずきが、いいさかずきであったなら、値になるかもしれない。しかし、いつかおじいさんに見せたら、あまりほめていなかった。それでも、みんな一まとめにして売ったら、いくらかの金になるだろう。」と、彼は思いました。
孫は、東京へ出ると、じきに掛け物は売ってしまったのです。
「いくら、本物でも、作のできがよくなければ、値になるものではありません。これは、作のできがよくありません。このほうは、汚れていますからだめです。これですか、こいつは、私に、鑑定がつきません……。」
そんなふうに、骨董屋から、まことしやかにいわれて、掛け物は、安い値で手放してしまいました。