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さかずきのりんね

さかずきの輪廻

小川 未明

「婦人公論 9巻1号」1924(大正13)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,603 字 · 21 页

青空文庫

「利助というような名人があったのに、どうしていままで知られなかったろう。」と、陶器の愛好家の一人がいいますと、

「ほんとうの名人というものは、みんな後になってからわかるのだ、見識が高かったとでもいうのだろう。」と、その話の相手はさながら、名人が、その時代では、不遇であったのを怪しまぬように答えました。

「私は、利助の作がたまらなく好きだ。まあ、この藍色の冴えていてみごとなこと。金粉の色もその時分とすこしも変わらない。上等のものを使っていたとみえる。」

「貧乏な暮らしをしたということだが、芸術のうえでは、なかなかの貴族主義だった。」

「私は、利助の作った完全なさらがあるなら、どれほどの金を出しても、一枚ほしいものだ。」

「その考えは、ぜいたくだろう。なにしろ、あの薄手では、大事にして、しまっておいても保存は、容易ではない。」

「なぜ、あんなに、薄手に焼いたものだろうか。」

「あの薄手がいいのだ。あれでなければあの純白の色は出せないのだ。」

「もっとも、利助ほどの天才は、自分のものが長く保存されるためとか、どうとかいうような俗な考えはもたなかったろう。ただ、気品の高いものを作り上げたいと思っていたにちがいない。