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しんぱくのはなし

しんぱくの話

小川 未明

「民政」1933(昭和8)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,076 字 · 7 页

青空文庫

あの水晶のように明るい雪解けの春の景色はなんともいえませんからね。それまで、私は、あらしや、吹雪の唄でも楽しんできいています。そして、あなたたちが、岩穴の中で、こうもりのおばあさんからきいた、不思議のおとぎばなしを教えてくだされば、私は、西風のうたっていた北の国の唄をうたってきかせますよ。」

「なんだか、来年の春が楽しみですが、もう人間が、ここへやってくるようなことがなければいいが。」

いわつばめは、不吉な予感がしたように、いきいきとした顔をくもらしました。

しんぱくは、またひとしきり、疾風に顔を動かしながら、

「このごろは、夜になると霜がおります。そして、星の影は、魔物の目のようにすごく光ります。どんな人間でも、露宿することはできますまい。あの、あおずんだ、真夜中の景色を、あなたに見せたいものです。」

だまって、しんぱくの話をきいていたいわつばめは、急に身ぶるいをしました。そして、あわてて岩穴に帰ってゆきました。

真夜中ごろ、木は、頭の上を、青い炎の尾をひいて流れる星を見ました。なんとなく、宇宙に存在するいっさいのものが、運命に支配され、流転することを語るごとくに感じたのです。