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そのひとのよねんかん
その人の四年間
宮本 百合子
婦人民主クラブの生い立ちと櫛田ふきさん
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,577 字 · 11 页
だけれども事務所へ来てみると六、七人の男の人がぞっくりとつめていて、それぞれに家族もあるだろうのにどうしてやってゆけるだろう。いかにもそこが不安だった。日本の民主化、婦人の民主化。これは何年もかかる歴史的な仕事である。一時「感激」がどんなにはげしくても、そして、その「感激」をわけあう男の人たちが数人集ったにしろ、仕事そのもののじみな本質は必ず経済問題にぶつからずにはすまない。その現実はどう解かれてゆくのだろう。これこそみんなの不安であった。
いよいよ八月二十六日、週刊『婦人民主新聞』がおくり出されることになった。名目上の編輯人である櫛田ふきさんの活動は、不思議な忙しさをもってきた。毎朝、鷺宮から銀座裏へ出勤してくる櫛田さんの大きい手提袋の中には、のりと鍋と刷毛が入れられるようになった。クラブの事務をたすけている若い人々と櫛田さんは、新しく出る婦人民主新聞のために宣伝のビラをはり、発送を担当し、ある時には新聞の立ち売りをやらなければならなかった。
櫛田さんは夏の陽にやけて色が黒くなった。そのように働いた。それは彼女にはげしい疲れを与えることであったが、その頃八年ぶりで婚約者がやっと、生きてかえることができた。