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だるまやひゃっかてん

だるまや百貨店

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第四巻」河出書房、1951(昭和26)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,178 字 · 11 页

青空文庫

カッシャン、カッシャン。トラはおはぐろをつけた反歯を見せ、口をあけぱなしにしたような表情で仕事に熱中しはじめた。四年前の恐慌からこの町だけでも相当な機屋が片はじから倒産し、機械をとめている。広幅ものの輸出羽二重や人絹を織っていたこの山陰地方の町の機屋は、直接アメリカの恐慌の打撃を蒙ったのであった。近頃では、大勢織子をつかっていたような機屋がつぶれる代りに、腐れかかったような家がガラスをはめた窓を一つ切って、その下に借りものの機を据えつけ、カッシャン、カッシャンとやりはじめた。そんな家が部落の内でさえ二三軒ある。機屋は工場をひらいていたのでは立ちゆかないので、織子をつかうより安上りな農家の神さんや娘の内職として少しずつ下うけさせるのであった。織子なら日給だが、そうして内職におろせば出来上った反当りで手間を支払い、しかもそれを機の貸し賃で小ぎった。村で現金はそんな手間働きでもしなければ見られない。たけをのうちでも、トラはそれでどうやらバラ銭を握るのであった。現金と云ったらそれとたけをがうちへ入れている十五円足らずが一家の収入の全部だ。

たけをは、

「どっこいしょ」