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だるまやひゃっかてん
だるまや百貨店
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第四巻」河出書房、1951(昭和26)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,178 字 · 11 页
カッシャン、カッシャンという機の音が遠く野良につたわって行って却って部落に満ちている静けさを感じさせる。
エッヘン! 特徴のある祖父さんの咳払いでたけをは目をあけた。やがて父親の岩太郎が帰って来た。上りばたで草鞋をときながら、
「寄りは何じゃったね」
と祖父さんに訊いている。ポンと炉ぶちで煙管をはたき、
「……東京の宮さんから京都へ御降嫁になるんじゃそうな。ついては御殿を二十万円で新築せにゃならんそうで、全国の信者が寄進せにゃならん塩梅じゃ――」
たけをは眠気がさめた。二十万円……御殿……村のこの暮しのどこからそんな金が出るのであろう……。父親の岩太郎はむっつり黙っていたが、
「なんぼあてじゃ?」
と聞きかえした。
「きっぱりせんが、マア一俵がとこじゃろ」
「…………」
祖父さんは、やがて伏目になり、艶のない貧相な白髯を片手でしごいて、咳払いをした。それでもみんな黙っている。祖父さんは半ば工合わるそうに半ば当てつけらしく、立って仏壇の方へ行った。チーン。鉦をならしている。
たけをはその音をきくと腹立たしい気になって、
「ほんまに出さんならんのやろか……」と云った。