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だるまやひゃっかてん
だるまや百貨店
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第四巻」河出書房、1951(昭和26)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,178 字 · 11 页
ハアー
島で育てば
娘十六、恋ごころ……
と小声で唄い出した。低いけれども、信江は声自慢で、どこでおぼえてくるのか、いろいろな唄を知っているので人気ものだった。盥に向っていた加代たちもだんだんつりこまれ、機械的に手を動かしながら一緒に唄ううち、
ハアー
主は寒かろ
夜ごと夜ごとの波まくら
と相当賑やかな合唱になった。
偶然のように白い割烹前掛姿の、七三に結った幾子が流し場の油障子のところから出て来た。そっちを向いてポンプにもたれていた信江が、ぷつんと唄をとぎらし、おやという顔をあげた加代に向って、眉をあげて見せた。
みんな静まりかえって手ばかり動かし出した。ところへやって来て、幾子は、
「……遠慮なさらないで、うたって下さい。本当に若い方は声も清らかやからええこと!……」
小皺がよってカサッとしたところに水白粉をつけた顔を信江にむけ、
「むかしものやから、この頃の唄はちっともわからんわねえ。……何です今の?」
と云った。信江は勝気で悧口そうな口元で笑うばかりで返事しない。加代が、ザーッと盥の水をあけて、
「信江さん、すみません。ちょっと」
信江は救いに舟という様子でにっこりし、ポンプを勢こめて揉みはじめた。