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だるまやひゃっかてん
だるまや百貨店
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第四巻」河出書房、1951(昭和26)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,178 字 · 11 页
津田の細君の幾子はとりつき場を失ったように、乾しものを直したりしながら、さもこの唄を唄えといわんばかりに、琴うたでもうたうような調子はずれの弱々しい声で、
廟行鎮の敵の陣
われの友隊すでに攻む
と、「爆弾三勇士」の歌をうたい、また油障子の方へ去ってゆく。信江がふっと笑いをこらえて肩をすぼめた。
「だめェよ、信江さん!」
そういう加代も軽蔑と腹立たしいおかしさで、油障子が閉ってしまうと、
「チッ!」
舌うちをした。
「ああ、しんど!」
わざとらしい高声で、色白のキヌが云った。それから小声で、
「うるさいなあ。……唄ぐらい何うたったかて、ええやないの」
だるまや百貨店の寄宿舎は、店主の津田の家に粗末な建てましをした三部屋が寄宿舎としてつかわれていた。五十人ばかりの女店員が寝起きする部屋の一方の窓は、津田の書斎のガラス窓に向っている。だるまやは、儲けるばかりが眼目ではない。皆が一つ家族の心持で、娘と親の心持で、苦しさも喜びもともにわけ、働くことを学び、社会に奉仕させていただくのが眼目であるというので、津田と細君の幾子が寄宿舎も自宅にくっつけてやっているのであった。