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とうげのちゃや

とうげの茶屋

小川 未明

「新児童文化 第2冊」1947(昭和22)年9月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 6,035 字 · 12 页

青空文庫

」

「いや、ちょうどいい。ああ、おまえがいけるなら、いっしょにやりたいと、いつもおらあ、ざんねんに思うだよ。」

「なあに、そうして、気持ちよく飲んでもらえれば、わしも酔ったように、うれしくなるぜ。」

二人は、親しく話しながら、開いている障子の間から、ほんのりと明るく暮れていく山の方をながめていました。

その翌日は、にわかに天気が変わりました。朝のうちから木枯らしが吹きつのり、日中も人通りが、絶えたのです。おじいさんは早くから戸を閉めてしまいました。

まだ、外の空は、幾分明るかったけれど、家の内は、灯をつけると、夜の更けたごとく、しんとしました。このときトン、トン、と戸をたたく音がしました。

おじいさんは、風の音だろうと、はじめは気にとめなかったが、つづいて、トン、トンと、音がきこえるので、だれかきたのだとさとりました。

ふと、きつねの出るうわさが、頭へ浮かんだので、おじいさんは、いっそう用心しながら、戸の方へ近づきました。

「なんのご用かな。」と、内から大きな声でききました。

「お閉めになったのを、すみません。」

そう、いったのは、やさしい女の声でした。