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とびよなけ
とびよ鳴け
小川 未明
「小学六年生」1940(昭和15)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,471 字 · 12 页
河の中ほどまで達するころには、人数が目に見えて減っていました。陸まで、もう一息というところで、無念にも弾丸を受けて、徳蔵さんは、
「天皇陛下 万歳!」と叫ぶとともに、水を紅に染めて見えなくなったのでした。
辰一は「殉国英霊の家」と、立て札のしてある家の前を通るたびに、目に熱い涙をためて、丁寧に頭を下げました。
「どうしても、あの自転車を買うのだ。あと、一週間ばかり、売れなければいいが。」
ある日、自転車屋の前へいってみると、その自転車が見えなかった。辰一は、びっくりして、おじさんにきいてみると、昨日売れたというのです。
「なに、あれくらいの車なら、また出ますよ。」と、なにも知らない自転車屋のおじさんは、力を落としている辰一を見て、そういったのでありました。
その後のことです。辰一は、お友だちと、キャッチボールをやっていて、ふと戦死した徳蔵さんのことを思い出すと、急に目頭が熱くなりました。
「僕を自転車にのせて、この原っぱを走ってくれたことがあったなあ。」と、いろんなことが、心に浮かんでくるのです。
「あの自転車はだれが買ったろうか。たしか、七円と札がついていたが、惜しいことをした。