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どこかにいきながら
どこかに生きながら
小川 未明
「童話」1946(昭和21)年7月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 4,469 字 · 9 页
その苦労は、けっして、すこしのことでなかった。いかに気が急いても、なにか見つからなければ、空しくは、帰れなかったのでした。
そのうち、塀をかき上る、するどいつめ音がすると、子ねこは、母ねこが帰ったのを知り、つづけさまにないて、ひさしの下から顔を出すのでした。
そのとき、母親のやせた姿が、西日を受けて、屋根へ灰色の長い影をひきました。毛のつやもなく、脾腹のあたりは骨立っていました。彼女は、子供の無事だったのを喜び、持ってきた餌を与えました。そして、みずからの空腹を忘れたほど目を細くして、子供の食べるのを見て満足したのでした。
冬の晩には、寒い、身を刺すような北風が、用捨なく、屋根の上を吹きまくりました。母ねこは、子供を壁のすみへ押しやるようにして、自分のからだで、風をさえぎるだけでなく、ぬくみであたためてやったのでした。そのため、子ねこは、安らかに眠ることができました。それは、子ねこの生涯にとっても、またどんなに感銘の深いことだったかしれません。
朝、太陽が上ると、母ねこは、また出かけました。霜が真っ白に、雪のごとく、屋根へ降りていました。その結晶が、ちかちかと、目をさしたのです。