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ながうたかんじんちょう

ながうた勧進帳

酒井 嘉七

(稽古屋殺人事件)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,698 字 · 26 页

青空文庫

とお追従笑いをされまして、新しく、煙管を吸いつけられました。その火が、蛍の光の様に――しかし、どす黒く赤く――薄暗くなった奥の部屋で、消えてはつき、ついては、消えていた事を憶えております。

光子さんは調子よく唄っていられました。あの、むつかしい、

※(歌記号、1-3-28)元より勧進帳のあらばこそ、笈の内より往来の、巻物一巻とりいだし

のところなんぞも大変お上手に唄っていられました。が度々、調子をはずしては、また唄いなおしていられました。健さんはこうした時、そっと、上目で天井を見上げては、何となく落ちつかぬ御様子でございました。それも、そうした折、光子さんの、うろたえた、汗ばんだ面に注がれる師匠のきつい目を、想像していられたがためで御座いましょう。しかし、それにいたしましても、とても、お上手に唄っていられた光子さんが、

判官おん手を取り給い

のところで、すっかり弱ってしまわれた様子でございました。二三度も、同じところを繰返していられましたが、四度目に、やっと、師匠のお許しがありましたのか、次にすすんで行かれました。が、その時、私は思わず、

※(歌記号、1-3-28)判官……