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なつかしいなかま

なつかしい仲間

宮本 百合子

「新女苑」1940(昭和15)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,477 字 · 9 页

青空文庫

いつか村上さんと親しくなって、おばあさんが直ぐ近くの藤堂さんという華族の樫林の裏にいるのがわかってからは、互に往き来もし、日に一遍は会わずにいられないようになった。上の学校への入学試験準備はその頃からもうひどくて、六年生は二学期から、放課後もいのこった。村上さんはどこをうけるの? ときくと、受け口の口元をしずかにほころばして、どこをうけるのか知らないわ、と云うのであった。私はおけいちゃんを自分のいる学校へ入れたいと思った。試験が近づくと、うちで一緒に夜も勉強したりした。おけいちゃんの家は酒樽の呑口をこしらえるのが商売であった。

女学校の試験なんか出来ない筈はないのに、おけいちゃんはどうしてか通らなかった。小学校の卒業のときは、総代で、東京市の優秀児童ばかりを集めた日比谷の表彰式で、市長からの賞品を貰った。そのとき綺羅を飾った少女たちの間に、村上けい子という最優賞の娘は、質素な紡績絣の着物に色の褪せた海老茶の袴という姿で人々を感動させたという新聞の記事が出た。私はその記事を読んで涙をこぼした。けれども、おけいちゃんがどうして受かる筈の試験をはずしたかという苦しい事情の奥底までは、察しる智慧がなかったのであった。