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なよたけ

なよたけ

加藤 道夫

「三田文学 四・五月号、六月号、七・八月号、九月号、十・十一月号」1946(昭和21)年5月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,415 字 · 163 页

青空文庫

の式をあげることに致しましょうかな。どうも、花聟の方が揉烏帽子にこの恰好ではあまりぱっとしませんが、さあ、文麻呂殿、お立ちなさい。……あなたの恋いに焦れたなよたけが待っているのですよ。(文麻呂をたすけ起す)

文麻呂 (狐につままれたように大納言に手をとられて、立上る)

男女の群集は、得たりとばかり、中央に道を開く。……

大納言に手をひかれて、中央奥、御所車の方へ歩いて行く石ノ上ノ文麻呂。

きらびやかな御所車はまるで「祭壇」のように神秘を孕んで立っている。

両側の群集は何か素晴らしい見世物を期待するかのように、しーんと静まり返って、この儀式を見物している。

御行 (御所車の前まで文麻呂を連れて行って)この中にあなたの思い焦れるなよたけの君がいるのです。文麻呂殿。なよたけはあなたのものです。なよたけははじめっからあなたのものだったのですよ。

文麻呂 (茫然として、御所車の前に佇立したまま、動かない)

御行 どうしたのです。え? 文麻呂殿。……嬉しくはないのですか?……それとも私の云うことを信じないのですか?

文麻呂 ………

御行 (意地悪そうに笑って)……さて、それでは大納言の信用が丸潰れになってしまう。