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なよたけ
なよたけ
加藤 道夫
「三田文学 四・五月号、六月号、七・八月号、九月号、十・十一月号」1946(昭和21)年5月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,415 字 · 163 页
第四幕
第一場
開幕前、「合唱」が低く聞えて来る。
合唱
白雲の たなびく里の
なよ竹の ささめく里の 天雲の
下なる人は 汝のみかも 天雲の
下なる人は 汝のみかも 人はみな
君に恋うらむ 恋路なれば………
われもまた 日に日に益る
行方問う心は同じ 恋路なれば………
契り仮なる一つ世に
踏み分け行くは 恋のみち
踏み分け行くは 恋のみち
静かに幕があがる――
竹模様に縁取られた額縁舞台。
額縁舞台には緑色の薄紗が幾重にも垂れ下っている。
その奥の方から、竹を伐る斧の音が忘我の時を刻むごとく、ひびいている。……
前舞台、左手より旅姿の石ノ上ノ文麻呂が現れる。しばらくは、耳を済ませて立止っているが、斧の音に吸い寄せられるかのように、額縁舞台の方へ歩み寄って行く。音もなく緑色の薄紗が次々に繰り上って行く。
場面は深遠なる竹林の奥。あたりは一面の孟宗竹が無限に林立し、夕陽が竹の緑に反映して、異様に美しい神秘境を醸し出している。あたりの空気は淀んだように寂然としている。中央に小さな空地があり、竹取翁が、後向に坐って、じっとこぐまったまま、無心に竹を伐る斧を振っている。文麻呂は、しばらくは夢でも見ているかのように、翁の後姿を眺めている。