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なよたけ
なよたけ
加藤 道夫
「三田文学 四・五月号、六月号、七・八月号、九月号、十・十一月号」1946(昭和21)年5月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,415 字 · 163 页
……この両の腕で何度あれの可愛らしい体を抱いたか分りませぬ。……だが、お若い方、なよたけのかぐやは愛するものの夢なのじゃ。……あの竹の林の中を跳び廻っているあれの美しい姿。……唄をうとうているあれの可愛い声。……あれは今でも時々この儂の眼に儂の耳にはっきりと蘇って来はする。だが、あれは儂にはもうまるで遠い昔の夢のような気が致しますのじゃ。……(翁は無限に遠くの世界を思い浮べる心)……おう、あれはいつのことじゃったろう?……貴方はあれがどこから生れ出たか御存知かな? あれは、本光る若竹の筒の中から生れ出たのじゃ。……儂にはもうはっきりとは思い出せない。……まるで、何千年も遠く過ぎ去った昔のことのような気がする。……かと思うと、つい昨日のことだったような気もする。……時には、あれは自分とはまるで縁もゆかりもない遥かな遠つ世の語り伝えだったような気さえ致しますのじゃ。
合唱
げにうつし世は 夢ならむ
げにうつし世は 夢ならむ
何事もみな 思い出の
伝えは遠き 竹の里の
いつの名残りをとどめてや
いつの名残りをとどめてや
これやこの 遥けくも古りにし伝え
跡や残るらむ 跡や残るらむ