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なよたけ

なよたけ

加藤 道夫

「三田文学 四・五月号、六月号、七・八月号、九月号、十・十一月号」1946(昭和21)年5月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,415 字 · 163 页

青空文庫

何でしたら、手前からあの娘にようくそのことを云い聞かせて差上げます。お父上だってきっと喜んで許して下さいますでしょう、とこうお訊ね申してみたのです。

綾麻呂 うむ。

衛門 そうしますと、文麻呂様は淋しそうに微笑顔をなさって、「衛門、……あのひとはもう遠い所に行ってしまったのだよ。」などと、妙に気のない御返事をなさいます。で、今度は家内までが膝をのり出しまして、「文麻呂様がお嫌と申すならば致し方がございませんが、どんなに遠い所に行ったっていいではありませんか。わたくしどもがお供を致しますから、御一緒に探しに参りましょう。」と、もう一度お誘い申してみたのですが、一向乗気の御様子もなく、かえって、「馬鹿だなあ、お前達は。……あのひとはもうこの見苦しい世の中から姿を消してしまったんだよ。それを今更探しに行ったって、何になる?」などとおっしゃって、もうすっかりお諦めになっている御様子です。とりつくしまがございません。

綾麻呂 うむ。……で、なにかね、その後、その娘はどうしているのか、お前も知らないのか?

衛門 さあ、手前、その後は、造麻呂にも逢う機会がございませんでしたが、……実はこちらに発つ前にちょっと人伝てに聞いた話では、何でも、やはり坊の小路あたりで大納言様の囲い者になっているらしく、まあ、きらびやかな唐織の着物でも