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なよたけ
なよたけ
加藤 道夫
「三田文学 四・五月号、六月号、七・八月号、九月号、十・十一月号」1946(昭和21)年5月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,415 字 · 163 页
……いやしかし、それは、その方が文麻呂にとってはかえってよかったのかもしれん。衛門、……恋に破れたものはな、時として思いも掛けぬ立派な、男らしいことをやるもんだよ。儂の息子は、そんなこと位でへなへなと参ってしまうような奴ではない。女子ひとり位のために世の中から落伍してしまうような意気地無しを儂は生んだ覚えはないのだ!
衛門 そうでございますとも、旦那様!
綾麻呂 ところで、衛門。……あいつは今日もまた朝っぱらからずっと部屋に引籠りっきりなのかな?
衛門 そうらしゅうございます。
綾麻呂 しようのない奴だな。……まだあの下らぬ歌よみ根性から抜けきれないと見える、……歌を作るのもいいが、ああして一日中ろくに飯も食わずに部屋の中にくすぶっていたって、いい歌が出来るはずはない。……あれも長いこと都の中で育った故か、どうもあの軟弱な都の悪風に染まってしまって、豪放なところが欠けていて困る。あれだけは厳しく躾けて直さなければどうにもならんな。……都の奴等と来たら、全く軽佻浮薄だ。あのような惰弱な逸楽に時を忘れて、外ならぬ己が所業で、このやまとの国の尊厳を傷け損ねていることに気がつかぬのじゃ。