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なよたけ

なよたけ

加藤 道夫

「三田文学 四・五月号、六月号、七・八月号、九月号、十・十一月号」1946(昭和21)年5月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,415 字 · 163 页

青空文庫

……なよたけはただ今連れて参りますでござりますから。(居間に上って、粗末な脇息をすすめる)さあ、さあ、どうぞひとつ。……(右手のなよたけの部屋の方へひっこみがてら)まあ、まあ、あのなよたけの奴め、田舎娘のくせして、暇さえあれば、まあ、簾のかげで古琴なんぞ弾いて、あれで気取った積りなのでござります。

御行 (居間の端に腰を掛けながら)あ、それから、お爺さん。……これはなんですが、なよたけの素性も私の素性も、露顕の式でも済むまでは絶対に秘密にして、誰にも知らさぬようにお願いしますぞ。

造麻呂 (怪訝そうに)……へえ、ま、……

御行 いや、別にこれはどうと云うわけもないのですが、ただあのようにうるわしいなよたけをしばらくは皆のものに秘密にしておいて、三日の餅でも祝って、立派な奥の方になってから、公然と皆のものを羨しがらせようと云う気持なのです。……葵祭の日あたりにでも、お迎えの車をこちらに寄越せたら、……と思っています。

造麻呂 へえ、……何分と宜しくお願い致しますでござります。……どうも手前、田舎者でございまして、さようなことはとんと勝手が分らぬもので、……(大仰に右手を指し)では、なよたけを呼んで参りまする。