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なよたけ

なよたけ

加藤 道夫

「三田文学 四・五月号、六月号、七・八月号、九月号、十・十一月号」1946(昭和21)年5月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,415 字 · 163 页

青空文庫

清原 大学寮学生、清原ノ………

文麻呂 お爺さん! 落着いて下さい! 何もそうあわてることはありません! 僕達はあなたの娘さんを助けにやって来たんです………

造麻呂 (上の空で草履をつっかけ、外に出る)おや! 大納言様がいらっしゃらぬ!……大納言様はどうなすったんです! 大納言様はどこへ行かれたのです! ああ、せっかくの娘の出世が台無しだ! (叫ぶ)大納言様! 大納言様! 大納言……

清原 (全く逆上して)あ、あっちの方です……あっちの方へ行かれました。

文麻呂 お爺さん!

造麻呂、人の云うことなど全く耳にも入らず、大納言の後を追って、よろめくように左方へ退場。しばらくは「大納言様! 大納言様!」と呼ぶ声。

やがて、舞台は急に大風一過。不気味なほど、寂然とする。

文麻呂も清原も、まるで空けたように、呆然として、立ちつくしている。

舞台はしばらくそのまま。………

やがて、あたりには、再び次第次第に緑の木洩日がきらきらと輝き始める。それに従って、思い出したようにまた小鳥が遠近で囀り始めた。

なよたけ、右手奥の部屋から、かすかにすすり泣きながら、静かに姿を現わす。草履をはいて、土間の外に出る。