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なよたけ
なよたけ
加藤 道夫
「三田文学 四・五月号、六月号、七・八月号、九月号、十・十一月号」1946(昭和21)年5月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,415 字 · 163 页
二人の青年が立っているのに気付き、瞬間、身じろぎをするが、つと逃げ去るように小路の方へ行く。……二人に背を向けて、悲しげに泣きじゃくっている。文麻呂は初めて見るその美しい姿に恍惚としてしまう。
文麻呂 (静かに、背後からなよたけの方に近付き、優しく慰めるような声で)……なよたけ。……もうお泣きになることはありませんよ。
清原 (震え声)なよたけ。……
なよたけ (くるっと振向き、語気強く)あなた達は一体誰なの!
文麻呂 あなたの心からの味方です。
清原 ぼ、僕、清原ノ秀臣って云います。
文麻呂 僕はその友人、石ノ上ノ文麻呂。
小鳥達は囀っている。木洩日は輝いている。
なよたけは泣き止んだ。彼女の眼はじっと文麻呂の姿に惹きよせられている。
文麻呂 なよたけ。……僕達はあなたを大納言の手になぞ決して渡しはしません。
清原 決して渡しはしません。……
文麻呂 大納言にはれっきとした奥の方がいるのです。
清原 いるのです。……
文麻呂 あなたが大納言のところへなぞ嫁かれたら、それこそ大変な不幸ですよ。
清原 大変な不幸です。……
文麻呂 あなたは汚れ多い都になぞ出るひとではありません。