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なよたけ
なよたけ
加藤 道夫
「三田文学 四・五月号、六月号、七・八月号、九月号、十・十一月号」1946(昭和21)年5月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,415 字 · 163 页
清原 うん。僕あとても同感なんだ。なんだか、この気持、とても清いものに思うんだ。「嘆きわび 身をば捨つとも 亡き影に 浮名流さむ ことをこそ思え……」僕あ、この頃、この和歌の意味がつくづく分って来たような気がするよ。
小野 何だかやにしんみりしちゃったね? それがどうしたと云うんだい?
清原 (勢いを盛り返して)……小野。僕あ君にだけは分ってもらいたいんだ。君んとこの家は代々大学寮の重職にある文章博士だ。僕の云いたいことは分ってくれると思う。……君だってやがてはお父さんの後を継いで文章博士になる身だ。君は「家名」と云うことを考えてみたことはないのかい? 僕は家の名誉ってことを考えてるんだ。……別に自慢するわけじゃないけど、僕の父上だってれっきとした三位の官人だ。……そりゃ、今僕が止めてしまったら、石ノ上はがっかりするだろうけど、僕あそれ以上にこんなことをしてたら世間のひとがどう思うかと云うことを考えてるんだ。僕達のやったことが後の世までも謗を受けるようなことになったら、僕達だけの恥じゃ済まされないんだぜ。家の恥なんだ! 父上の恥なんだ! 石ノ上は、貴様のように世間の思惑ばかり気にしていたら何にも出来やしないぞって、よく云うけど、……それにしてもあいつのやることは少し乱暴だ。