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なよたけ

なよたけ

加藤 道夫

「三田文学 四・五月号、六月号、七・八月号、九月号、十・十一月号」1946(昭和21)年5月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,415 字 · 163 页

青空文庫

……それほどの一大事が、今、刻々と近付いて来つつある。何だか俺にはそんな気さえして来た。いいかい? 石ノ上。俺は何も今更、君の行動を阻止しようとか、妨害しようとか、そんな気持は微塵もないんだぜ。これは親友としての俺の最後の忠告だ。いいかい? 慎重に反省して、事を運んでくれよ。千載に恥をさらすような真似は絶対にしてくれるなよ。うっかりすると、君の一生は滅茶滅茶になってしまうからな。やり損ったら最後、君はどんな眼に遭うか分らんのだ。全く、危険極まる仕事なのだ。

文麻呂 あははははは。

小野 何が可笑しいのだ?

文麻呂 いや、別に可笑しいわけではないが、貴様もやはり哀れむべき凡人の仲間の一人であったか、と思ってね。御多分に洩れず、貴様もあんなあなに操られている組だ……。

小野 (いよいよ不気味そうに石ノ上の眼差を詮索して)石ノ上!……どう云うことなんだね、一体、君の云うその「あんなあな」とか云うのは?

文麻呂 君はまだ分らんのか? 教えてやろう。そいつは、頼みもしないのに、俺達を唆かして、おけらの足に糸をつけ、玩具の車を引張らせる奴さ。帆立貝の中に俺達を閉じ込めて、宇宙の真底を見せてくれない奴さ。