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なよたけ

なよたけ

加藤 道夫

「三田文学 四・五月号、六月号、七・八月号、九月号、十・十一月号」1946(昭和21)年5月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,415 字 · 163 页

青空文庫

だ! 俺達までが気違い扱いにされちまうからな! 俺達の将来まで滅茶滅茶にされちまうからな!

文麻呂 (悲痛な声をしぼって)小野ッ! 何を云うんだッ! 待ってくれ!……小野ッ!

小野 石ノ上! 俺は失敬する! さよなら! (逃げ去るように左方へ消える)

行者達の呼ばい声、鈴の音が不気味に聞えている。

中央に呆然自失したごとく、文麻呂はひとり残される。

文麻呂 (うわごとのごとき独白)……俺が「恋」をしてる?……「恋」のために俺の気が狂っている?……俺の気が狂っている?

行者達の呼ばい声、鈴の音。それに重って男女の嘲け笑いが聞えて来る。

続いて、「気違い、気違い」と云う私語・囁き声が幻聴の如く、文麻呂の不穏な頭を乱し始める。……

文麻呂、両手を頭にやって、心の乱れを鎮めようとする。

行者達の呼ばい声・鈴の音。……

再び、男女の嘲け笑い。

文麻呂、頭を両手で抑えたまま、がっくりとひざまずく。……

やがて、呼ばい声も鈴の音も次第に遠くへ消えて行き、舞台裏から「合唱」が低く聞えて来る。

合唱

術なくも 苦しくあれば

術なくも 苦しくあれば

よしなく物を思うかな。

白雲の たなびく里の