轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ひとごろし

ひとごろし

山本 周五郎

「別冊文藝春秋」1964(昭和39)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,607 字 · 45 页

青空文庫

「喰べないかね」と彼は云った、「この菓子はうまいよ」

「この菓子はうまいよ」かねはいじ悪く兄の口まねをした、「お兄さまにはそんなことしか仰しゃれないんですか」

この辺で泣きだすんだ、これがなによりもにがてだ、と六兵衛は思った。けれどもかねは泣かなかった。顔をこわばらせ、凄いような眼で兄の顔をにらみながら、ふるふると唇をふるわせた。

「お兄さまにも嫁にきてがなく、わたくしにも一度として縁談がございません」とかねは云った、「なぜだか御存じですか」

「そう云うがね、世間にはそういうことが」

「なぜだか御存じですか」

六兵衛は黙り、もしも女というものがみんな妹のようだとしたらおれは一生独身でいるほうがいいな、と心の中で呟いた。

「みんなお兄さまのためです」とかねはきっぱりと云った、「あなたが臆病者といわれているためなんです、侍でいて臆病者といわれるような者のところへは、嫁も呉れはしないでしょうし、嫁に貰いてもないのは当然です、そうお思いになりませんか」

先月も同じ、先々月もそのまえも、定期的に何年もまえから、同じことを云われているように感じ、けれど六兵衛はそんなけぶりもみせず、よく反省してみるように、仔細らしくなにかをみつめ、首をかしげた。