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ひとりすもう

ひとりすまう

織田 作之助

「海風 第三号」1938(昭和13)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,706 字 · 40 页

青空文庫

としてのぼくを見られたくない、言いかえると、その女からは何も求めていない、その女を問題にしていない、即ち、その女を「女性」として見ていない、という風に見てほしいという本能がある。この本能はぼくがその女を問題にしている時でも、問題にしていない時でも、絶えず意識の中に網の様に張られているのだ。恐らく、自尊心と羞恥心から来るものと思う。この本能は愛の駆引きに非常に役立つものらしいけれど、それは結果としてである。さてその時もこの奇妙な本能が意識の先にあったのだ。ぼくはこんな風に思っていた。――この女は、死ぬんじゃありませんか、というぼくの言葉を純粋に彼女の自殺を心配した上での真実の疑問だと思うだろうか。そう思うにしても彼女をそんな風に見たのは、若しそうで無いなら随分間の悪いことだが、とにかく、そう思うだろうか。それとも、もっと不純な質問と見るだろうか。――と。だから彼女が、あなたこそ死にそうですわよ、と言って微笑した時、今から思うと、恐らく、彼女は喀血したぼくの身体のことを言ったのであろうが、ぼくはそう思わず、彼女は、――あなたは私を自殺する女と早合点成すったらしいけど、私がそう見えるなら、夜更けの海岸で私と同じ様に海をみていらっしゃるあなただって、そう見える筈じゃない? 死ぬんじゃありませんか、とは仲々この夜更け