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びんのなかのせかい

びんの中の世界

小川 未明

「赤い鳥」1927(昭和2)年1月号

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 4,126 字 · 9 页

青空文庫

」

正坊は、おじいさんの話を聞くたびに、なんとなく不思議な感じがしたのです。そして、そのことを、まったくもうろくからの言葉ばかりでないというような気がしたのでした。

それで、正坊は、やはり、家の前に立って、あちらの山をながめていました。青い空の下に山の線が、すその方へなだらかに流れている。夜になると、山の上には、さびしく星が輝いたのである。春から、夏にかけて、その山は紫に見えました。そして、冬になると、山は真っ白になりました。

「雪が、あのように積もっては、どんな男も山を越してくることはできぬだろう。……しかし、その勇士は、また非凡な術で、雪の上を渡ってこないともかぎらない。」と、冬の晩方など、正坊は、外に立ってながめていたこともありました。

おばあさんは、古くから家にあるのだといって、あめ色のガラスびんを大事にして、たなの上に飾っておかれました。雪の降るころ、南天の実が赤くなると、おばあさんは切ってきて、そのびんにさして仏さまにあげました。また、春になると、つばきの枝などを折ってきて、びんにさして、やはり仏壇の前に供えられたのです。

正坊は、なんとなく、そのびんがほしくてなりませんでした。