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ふしぎないわ

ふしぎな岩

林 芙美子

「こども朝日」1948(昭和23)年3月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 3,676 字 · 8 页

青空文庫

山の上では、たくさんの仲間がじいっと心配そうに、とんび岩を見ているような気がしました。

何日いても、海も山も見えないせまい景色なのです。――ある夜、岩は、思いきって、少しずつでも山へ登って行こうと思いました。夜中に起きて、少しずつ歩いてみましたけれど、からだが重くてなかなか登りの道へ歩き出すことができません。とんび岩は、神さまにいのってみました。神さまは、いくらおいのりしてもなんともおっしゃってはくださらないのです。

もう、こんなふうではしかたがないと思い、とんび岩は、来る日も、来る日も、朝から晩まで、じいっと神さまにいのりつづけました。すると、ある夜ふけ、急にからだが風船のようにかるがると浮き上って、まるでやわらかい風のように、とんび岩は空の上に舞いあがっていました。

とんび岩はみょうなことだと思いました。

からだの下を、ごう、ごう、ごう、とすごい風が吹いています。とんび岩はなんだか急におそろしくなってしまって、ああ、おれはもう、神さまにおすがりするより道はないのだと、いっそうねっしんに、神さまへおすがりしていました。

眼がまわって、長い間、とんび岩は暗い暗い空中にただようていました。