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まかないのぼう
まかないの棒
黒島 伝治
1923(大正12)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,538 字 · 10 页
暫らくたつと、弟を背負って隣家へ遊びに行っていた祖母が帰ってきて、
「まあ、京よ、風邪でも引いたんかいや。――頬冠りだけは取って寝え。」と云った。
が彼は、寝た振りをして動かなかった。
夕方には、山仕事に行っていた父母が帰った。
祖母は、風邪には温いものがいいだろうと云って、夕飯に芋粥を煮た。京一は、芋粥ばかりを食い、他の家族は、麦飯に少しの芋粥を掛けてうまそうに食った。
「飯食う時だけは、その頬冠りを取れえ!」
と、祖母は云ったが、父母は、じろりと彼を見て、放っとけというような顔をした。
二三日、休んでいるうちに、家族には、風邪でないことが明かになった。
二日目の朝、頬冠りを取って顔を洗っていると、祖母は、彼の頭に血がにじんだ跡があるのを見つけた。
「どうしたんどいや。醤油屋で何どあったんかいや!」
父母が毎日のように山仕事に出かけたあとで祖母は彼にきいた。
「いいや。」
彼は、別に何も云わなかった。
五日目の晩に、父は、
「そんなに遊びよったら、ふよごろ(なまけ者のこと)になってしまうぞ!」と云った。
「己らあ、もう醤油屋へは行かんのじゃ。」
京一は、何か悲しいものがこみ上げてきて言葉尻がはっきり云えなかった。