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まかないのぼう
まかないの棒
黒島 伝治
1923(大正12)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,538 字 · 10 页
「醤油屋へ行かずにどうするんどい? 遊びよったら食えんのじゃぞ!」
京一は、ついに、まかないの棒のことを云い出して、涙声になってしまった。むつかしい顔をして聞いていた父は、
「阿呆が、うかうかしよるせに、他人になぶり者にせられるんじゃ。――そんなまかないの棒やかいが、この世界にあるもんかい!」
あくる朝、父は山仕事に出る前に、
「今日は、もう仕事に行け!」
といかつく京一に云いつけた。
「いや、己らは山へ行く。」
「阿呆めが! 山へ行たってどればも銭は取れんのに、仕様があるかい。醤油屋へ行け!」
それでも、醤油屋へ行きたくなくなって、彼は、十時頃まで日向ぼっこをしていた。
「われが一人でよう行かんのなら、おばあがつれて行てやろうか。――行かなんだら、お父うが戻ってまた怒るぞ。」
祖母はすやすや寝ている小さい弟を起して、古い負いこに包んで背負うと、彼を醸造場へつれて行った。年が寄って寒むがりになった祖母は、水鼻を垂らして歩きながら、背の小さい弟をゆすり上げてすかした。
醸造場へ行くと、彼女は、孫の仁助に、京一をそう痛めずに使うてやってくれと頼んだ。
京一は、きまり悪るそうに片隅に小さく立っていた。